小売等役務商標制度

 平成18年6月7日に公布された「意匠法等の一部を改正する法律」により、  平成19年4月1日より小売等役務商標の商標登録出願の受付が開始されることになりました。
 ここでは、今回導入される小売等役務商標の概略について解説します。
 より詳しい情報につきましては、特許庁ホームページの「小売等役務商標制度説明会テキスト」をご参照下さい。
また、小売等役務の商標登録出願についてのご依頼・ご相談はこちらからお申込下さい。

小売業者・卸売業者の顧客へのサービスの保護

 まずは、今まで「小売」というサービスについて保護がされてきていなかったことについて説明します。
 小売業や卸売業とは、一般需要者・取引者のために商品を仕入れ、店頭に陳列して販売する業種のことを思い浮かべると思います。小売業や卸売業の信用は品揃え、接客サービス、商品陳列方法などにありますので、このようなサービスが保護されてきてなかったということについて疑問に思われている方も多いと思われます。これは、商標法上の役務(サービス)が「他人のためにする労務又は便益」のことであると解されているからです。
 たとえば、エステティックサロンで提供するサービスは「美容」「マッサージ」「美容に関するカウンセリング」等の労務や便益を他人に提供し、需要者はこれらの労務や便益に対して対価を支払っているということができます。
 しかし、小売業や卸売業はあくまでも「商品の販売」を目的とするものであり、品揃え、接客サービスなどは、商品本体の価格とは別に独立した取引としての対価の支払いが行われているわけではありません。このため、品揃え、接客などのサービスはその商品の販売を促進する「付随的なもの」であるとして商標法上の役務としては認められなかったのです。
 それでは、今までの小売業・卸売業の商標についてはどのようにして保護されてきたのでしょうか。
 今までは品揃え、接客などのサービスはその商品の販売を促進する「付随的なもの」であるとして商標法上の役務としては認められなかったという背景もあり、小売業・卸売業の商標については、小売・卸売で取扱う個々の商品を指定して商標登録をし、商標の保護を図ってきていました。
 今回導入される小売等役務制度は小売・卸売の商品の販売に付随したサービスについても商標法上の役務に含めて保護が可能になるよう立法によって手当てされたものであると考えられます。

小売等役務制度によって保護される役務

 今回の法改正により小売・卸売の商品の販売に付随したサービスについても商標法の保護の対象となることになりましたが、気をつけなければならないことは、小売等役務制度が今までの商品の商標権の保護の範囲を狭めるものではないということです。
 先ほど、小売業・卸売業については個々の商品を指定して商標登録を行うことにより、商標の保護を図ってきたということを述べましたが、商標の使用の態様によっては、商品の商標の使用にも該当するが、小売等役務の使用にも該当するということもあります。
 例えば、「菓子店」の店頭において販売しているケーキを店員がその店の商標を付したケーキの箱に詰める行為について考えてみると、ケーキを持ち帰るために箱に詰める行為は商品の販売に付随して行う接客サービスということもできますし、商品「ケーキ」に商標を付すという行為であるとも考えられます。このように商品の販売に付随して行う接客サービスが「小売等役務」に該当しながら、商品の「菓子」の使用になるケースも考えられます。このため、小売等役務の商標登録出願を行う場合は、その商標の使用が商品の使用にも該当しないかどうかについて検討する必要があります。
 小売等役務の商標の使用については、特許庁の「小売等役務商標制度説明会」において例示しています。「小売等役務についての商標の使用」の例示についてはこちらをご覧下さい。

商標登録出願の審査について

 小売等役務を指定した商標登録出願も従来の商標登録出願と同様に拒絶理由に該当している場合には登録されません。
 したがって、識別力に係る登録要件や先願登録商標についても審査されます。

先願登録商標の審査(商標法第4条第1項第11号)

 上記の「菓子店」の例のように、商品の商標の使用と小売等役務の商標の使用が重複するということから、特許庁の審査においても小売等役務を指定した商標と商品を指定した商標との類否を判断(クロスサーチ)することになっています。
 したがって、小売等役務の商標登録出願が受け付けられる平成19年4月1日以前に出願された商標登録出願や登録商標によって拒絶されることは十分に考えられます。
 また、小売等役務の導入に伴う経過措置により平成19年4月1日から平成19年6月30日までに小売等役務を指定役務とする商標登録出願同士については、出願の前後について判断しない(同日に扱う)ことになりますが、この期間に出願された商品を指定する商標登録出願との関係では出願日の前後が判断されます。このため早めに出願を行っておいた方が良いということになると考えられます。

小売等役務の出願のご依頼について

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